日本でタトゥーといえば「反社会組織の象徴」「温泉やプールに入れない」などマイナスなイメージがまだまだ残っていますよね。一方で繊細で美しいデザインはアートとして受け入れられつつあります。
実は中国と日本のタトゥーに対する意識は歴史的な背景もありよく似ています。昨今では芸能人や外国人スポーツ選手の影響でファッションとしても認知され、タトゥーを入れられるお店も増えていますが、中国でもタトゥーがあることによって、できないことや入れない場所があるのか気になりますよね。
今回は、そんな中国の気になるタトゥー事情についてご紹介します。
中国のタトゥー事情!在住経験者に聞く中国人の意識とは?
1. もとは刑罰だった!?タトゥーの歴史
中国には秦時代から刑罰として罪人の顔に入れ墨する「黥刑(げいけい)」があったという記録があります。ちなみに日本にもかつて同様の刑罰があり、このことから日中両国とも「入れ墨=罪人」のイメージが残っているようです。
時代を経ると刑罰ではなく、自分の意思で彫った入れ墨も文献に登場。有名なところでは、南宋時代の武将・岳飛(がくひ)のエピソードがあります。濡れ衣を着せられ拷問を受けた岳飛の背中には「忠義を尽くし、国に報いる」という意味の「尽忠報国」の四文字が彫られていたそうで、非業の死を遂げた岳飛を英雄的な存在として印象づけています。
その後、罪人や英雄など特別な人物だけでなく普通の人物の入れ墨も描写されるようになりました。中国四大小説のひとつ「水滸伝」には入れ墨のある登場人物が3人も登場し、日本で水滸伝ブームが起こった江戸時代末期に、浮世絵師たちが華やかな入れ墨の登場人物たちを描きました。日本文化への影響もあったと思うと感慨深いですね!
2. 黒社会からアートへ 近現代から今の中国人の認識は?
1920~30年代、上海の庶民のあいだでモダンであるという理由で「刺花(入れ墨)」が流行しました。その後、1970年代から80年代初頭にかけてはタトゥーは反社会組織に入るための度胸試しなどにも使われていました。香港の古い暴力団組織では左腕に青龍、右腕に白虎のタトゥーを施し組織への帰属の象徴としていたという話も。
このような背景もあるので年配の人を中心にタトゥーに良くない印象を持っている人もいますが、90年代以降になると、王菲(フェイ・ウォン)や謝霆鋒(ニコラス・ツェ)などのタトゥーを入れた有名俳優や、人気歌手たちが登場し自己表現の一種として、またアートとしても認められるようになってきました。
そのほかイギリスのベッカム夫妻など外国の有名人の影響もあり、タトゥーへのハードルはどんどん下がっています。今では有名な彫師やタトゥー店もどんどん増えてきているそうです。
なお、中国のテレビ事情については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせて読んでみてくあさい。
3. タトゥーをしているとできない仕事
社会的認知度が上がってきているとはいえ、公的にはタトゥーを禁止している中国。タトゥーを入れている人は軍人や警察官などを含む公務員として働く事ができません。筆者は銀行や一流ホテルなどでいわゆる「きちんとした」職場でタトゥーを入れているスタッフを見たことがないので、就職にも影響があるのではないでしょうか。
なお、中国の就職事情については以下の記事で特集していますので、こちらもぜひ一読してみてください。
4. 政府やメディアの見解
2018年1月には、中国の放送に関する監督庁では「タトゥーのある芸能人は、低俗なためテレビやラジオ番組で取り上げない」という方針を発表しています。また2018年3月に行われたサッカー親善大会(2018チャイナカップ)では中国の代表選手が「中国代表としてプレーするときはタトゥーを隠すよう」告げられ包帯を巻くなどの対応をした、との報道がありました。
これらのことから国としてはタトゥーを認めていないとわかりますが、数多くあるタトゥー店は特に取り締まられている情報はなく、個人が楽しむものとしては今のところお咎めはなさそうです。
なお、中国語でスポーツを観戦するときにそのまま使える便利なフレーズを以下の記事にまとめましたので、こちらもぜひチェックしてみてください。
5. タトゥーを入れている中国人は多いのか
上海に在住していた筆者は、体にタトゥーをしている中国人を見たことがありません。プールや大衆浴場にタトゥー禁止の表示を見かけないのは、禁止するほど多くの人にタトゥーが浸透していないためかと思います。中国人には若い人でも医食同源の考えが根づいており、身体を大切に扱う気持ちが強いです。メイクやピアスをしている人も日本人よりも多くありません。
個人的な見解はありますが、皮膚に傷をつけなければならないタトゥーはハードルが高いのではないかと思います。ロックの本拠地である北京には、本格的なタトゥー店が多いようですが、特別な人(アーティストやミュージシャンなど)が自己表現の一種として楽しんでいるという印象があり、日本人のタトゥーに対する感覚と近いでしょう。
6. メイクとしてのタトゥー
筆者の周りには、腕や足などにファッションとしてタトゥーを入れている中国人はいませんが、いわゆる「タトゥーメイク」をしている知人女性が2人いました。1人は眉毛、もう1人はアイラインに入れていてくっきりしたインパクトのある目元を演出していました。
目のきわギリギリにタトゥーを入れるなんて…と筆者はドキドキしてしまいますが、彼女たちは「だって毎日メイクするの大変でしょう?タトゥーは1度入れればいいんだから楽よ!」とニッコリしていました。2人とも10歳以上年上の女性だったので、若い人というより年配の人たちのあいだで行なわれていたようです。
その後、果敢にもトライした日本人の友人に効果などを聞いてみると、時間がたつとタトゥーは少し薄くなってしまうのだそうです。
7. 中国語ではなんというのか
タトゥーは中国語で「紋身(ウェンシェン)」と呼ばれ、タトゥーを入れることを「紋紋身(ウェン ウェンシェン)」と言います。「タトゥーを入れたい」は「我要紋紋身(ウォ ヤオ ウェン ウェンシェン)」。また「刺青(ツーチン)」と言っても通じますが、その文字の通り色の青いものがイメージされるます。現在のタトゥーはカラフル名なので「紋身(ウェンシェン)」のほうがふさわしいのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
中国でもアートやおしゃれとして若い人を中心に楽しまれているタトゥー。芸術として鑑賞するのは楽しですね。中国では日本よりお手軽に試すことができますが、衛生面やアフターフォローなどが心配です。一度入れてしまうと除去するのはとても大変なので、もし興味がある場合はよく検討されることをお勧めします!
中国のタトゥー事情!在住経験者に聞く中国人の意識とは?
1. もとは刑罰だった!?タトゥーの歴史
2. 黒社会からアートへ 近現代から今の中国人の認識は?
3. タトゥーをしているとできない仕事
4. 政府やメディアの見解
5. タトゥーを入れている中国人は多いのか
6. メイクとしてのタトゥー
7. 中国語ではなんというのか