中国では旧暦の1月1日にお正月を迎えます。元旦は春節と呼ばれ、故郷から遠く離れ働いている人たちもみんな帰省して一家団欒の時間を過ごします。2020年の春節は1月25日。春節のときには日本と同じようにお年玉をやりとりする習慣がありますが、日本のお正月とどう違うのか気になりますよね。
お年玉は中国語で「圧歳銭(ヤースイチェン)」といいます。親が子供に渡すだけでなく、目上の人が、学生や独身者や会社の部下たちに渡す地域もあるんですよ。
そこで今回は、中国在住歴6年の筆者がお年玉の相場やタブー、昨今主流のモバイル決済など気になる現地のお年玉事情をご紹介します。
中国のお年玉事情!在住経験者に聞く8つの文化!
1. お年玉の由来
お年玉の始まりにはこんな話が伝わっています。
昔、山に緑の眉毛と赤い目を持つ恐ろしい魔物が住んでいました。大晦日になると魔物は山から村へ降りてきて家に入り、眠っている子供をその長い手で撫でました。すると子供は魂を抜かれてしまったり、死んでしまったりしました。親たちは魔物を憎み、眠らずに子供を見守っていましたが甲斐もなく撫でられた子供は死んでしまうのでした。
この村に鍛冶屋の夫婦と小さな娘が住んでいました。大晦日の夜、娘が飴を欲しがりましたが無かったので、銅銭を赤い紙に包んで枕元に置いてやりました。その晩、魔物が現れ娘を撫でようとしたとき赤い紙の中の銅銭がぴかっと光ったかと思うと、魔物は大声をあげて去っていきました。夫婦はもうだめだ…と思いましたが次の朝、元気よく目覚めた娘を見て、赤い紙に包んだ銅銭が魔よけになったのだと理解しました。
それを聞いた村の人たちは子供の枕元に赤い紙に包んだ銅貨を置くようになり、これがお年玉の習慣として各地に広まったそうです。
2. お年玉は中国語で何という?
中国語で「圧歳銭(ヤースイチェン)」と呼ばれるお年玉。これはお年玉の由来となった伝説の魔物の名前に関係があります。
魔物の名前は「祟(sui)」といい、輝く銅貨がこれを退治してくれることを「圧祟(yasui)」と表しましたが、「祟(sui)」という字が良くないので同音の「歳(sui)」の字が使われるようになり「圧歳銭」として広まりました。
また縁起の良い赤の袋に入れて渡されることから「紅包(ホンバオ)」とも呼ばれますが、紅包はご祝儀袋を指すので、お年玉だけでなく結婚祝いやボーナスの意味で使われることもあります。
3. お年玉を渡すタイミング
日本と同じように、中国でも家族や親族、旧友などが集まり春節の挨拶を交わしますので、そのタイミングで年長者が目下の者たちに配るのが一般的とされています。地域によっては年長者に対し長寿や健康を祝して渡したり、年末に上司が部下に配ることもあるようです。
筆者の勤務先でも中国人の同僚から「どうして日本人は上司から部下にお年玉って配らないの?」といたずらっぽく聞かれたものでした。
なお、春節については以下の記事にまとまっていますので、こちらもぜひ一読してみてください。
4. 地域によって大きく違う!お年玉の金額の相場
ではお年玉の相場はいくらでしょうか?
中国を代表するフィンテック企業「挖财记账理财」の“全国お年玉マップ”によると、お年玉の相場は青海省や貴州省の300元(日本円約4,350円)から福建省の3,500元(約50,750円)まで幅広く、平均を出しづらいのが実情です。
都市部と地方では経済格差も大きく、沿岸部が500~1,000元、内陸部が300~500元が相場になります。また金額は渡す相手によっても変わってきます。自分の子供には100元~、学生や後輩などの若い人には50元~200元、部下には100元~1,000元、年長者には400元~2,000元が相場とされています。
中国の富裕層のなかには「自分の子供に5,000元(約72,500円)」という人もいるくらいなので相場はあくまで目安です。実は広東省の平均は50元(約725円)とほかの地域に比べ群を抜いて低いのですが、春節中に会う人全員に10~50元のお年玉を渡す習慣があるためだとか。
なお、中国通貨については、以下の記事で特集していますので、合わせて読んでみてください。
5. お年玉を渡すときに気をつけたいポイント
中国人は日本人以上に数字を気にします。「好事成双(良いことは対になっている)」のことわざの通り、偶数が縁起が良い数字として好まれますので、お年玉の額も必ず偶数にしましょう。
ただし、4(スー)は死(スー)と同音なので避けたほうが良いでしょう。ちなみに縁起が良いとされる数字は「財産ができる」の意味を持つ「発」に発音が似ている8や、「物事が順調にいく」を意味する「六六大順」の6になります。
なお、中国語の数字の数え方は以下の記事で詳しく説明していますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
6. 靴や傘はNG!注意が必要な春節の贈り物
春節の時期に親族や旧友にお年玉だけでなくプレゼントを贈る人もいるようですが、ここでも注意が必要です。新しい1年を良い1年にしたいため中国人は普段以上に験(げん)を担ぎ、縁起の悪いものを避けたがります。
ですので「靴(シエ)」(よこしまであることを意味する「邪(シエ)」と発音が相似)、「梨(リー)」(別れるを意味する「離(リー)」と発音が相似)、「傘(サン)」(バラバラになることを意味する「散(サン)」と発音が相似)などは春節にふさわしくない贈り物とされています。
7. モバイル決済が主流に!?大きく変わるお年玉事情
日本以上にモバイル決済がメジャーになっている中国。特に都心部では9割以上の人がモバイル決済を利用しているとのデータがあり、その影響はお年玉のやり取りにも顕著に表れています。
中国の電子マネーというと、メッセンジャーアプリ「WeChat」のWeChatPay(微信支付)と、中国最大のインターネットショップタオバオを運営するアリババ・グループの展開するアリペイ(支付宝)が有名です。
WeChatPayでは個人にお年玉を送るのはもちろん、チャットグループ内にくじ式のお年玉を送り誰が高いお年玉を引き当てるかをゲーム感覚で楽しんだりもするとか。
一方アリペイは2016年から「福」の字を5つスキャンして送ったユーザーを対象に計5億元のお年玉を振る舞う「5福を集めるお年玉キャンペーン」を実施。街中でスマホを片手に「福」の字を探す姿が春節の風物詩になりつつあります。
なお、WeChatPayなど中国の電子マネーについては以下の記事で特集していますので、合わせて読んでみてください。
8. 日本からの旅行者も電子マネーでお年玉を渡せるか
WeChatPayもアリペイもアプリをダウンロードするのはそう難しくありませんが、スマホ決済には中国国内で銀行口座を開設する必要があります。
外国人の口座開設はここ数年で厳しくなり、パスポートだけでなく外国人居留証(ビザ保持者申請)の提出が要求されるので、あなたが旅行者であれば少しハードルが高いですが、在住者や留学生はトライすると楽しいかもしれませんね!
なお、中国のビザについては以下の記事にまとまっていますので、合わせて読んでおくことをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?
子供だけでなく年下の友人や年配者にも渡す中国のお年玉文化。お正月シーズンのコミュニケーションツールとしてもうってつけです。主流になりつつある電子マネーのお年玉にもトライしてみたいところですが、中国大陸の銀行口座の開設がネックになりそうですね。
筆者としては、日本のアニメのキャラクターは子供から若者に人気なので、有名なキャラクターのポチ袋でお年玉を用意するだけでも「日本にもお年玉があるんだね」と盛り上がり喜んでもらえると思います。実際に渡すときは紹介したお年玉の相場やタブーなども参考にしてみてくださいね!
中国のお年玉事情!在住経験者に聞く8つの文化!
1. お年玉の由来
2. お年玉は中国語で何という?
3. お年玉を渡すタイミング
4. 地域によって大きく違う!お年玉の金額の相場
5. お年玉を渡すときに気をつけたいポイント
6. 靴や傘はNG!注意が必要な春節の贈り物
7. モバイル決済が主流に!?大きく変わるお年玉事情
8. 日本からの旅行者も電子マネーでお年玉を渡せるか