中国語にも場面に応じて一定ルールの敬語表現が存在します。日本語は表現方法が多彩、多様で細やかな言語ですが、現代中国語は日本語と比べると直接的で表現方法はとてもシンプルです。そこで今回は、基本的な中国語の敬語の使い方についてをご紹介します。
ちなみに、中国語には日本語の、丁寧語、尊敬語、謙譲語の様に、明確な敬語文法がありません。場面に応じて相手に対して失礼に当たらない様、気を使った言い方という程度に考えて頂いたら宜しいと思います。日本語の敬語と全く同じでは無い点を先ずご認識してみて下さい。
中国語の敬語!場面に合わせて使い分ける8つの文法ルール!
1. 中国語の敬語表現の基本・二人称を丁寧に表現する「您」
敬語の基本は相対している目の前の方に丁寧に接する事です。目の前の方は二人称の対象者。つまり「あなた」であり、中国語では一般的に「你」(ニー)と言います。
中国語の敬語(的表現)の基本は、この「你」を丁寧に表現することと心得て下さい。一般表現では「你」ですが、敬語(的表現)では「您」(ニン)と言います。日本語の場合は、二人称表現も動詞表現も丁寧な表現にして敬語として用いますが、中国語の場合は二人称の名詞のみを丁寧に表現すれば足りてしまうのです。簡単ですよね。
但し気を付ける事は、親しい間柄になったら次第に「您」を「你」に戻して下さい。初対面の方に「您」を用いるのはマナーですが、親しい関係になったなら、目上の方でも「你」で大丈夫です。日本人の感覚とはこの辺りが微妙に違うのです。中国の方って、結構ざっくばらんなんです。
2. 二人称を「您」と「贵」でより丁寧に表現する例
初対面の相手にお名前を聞く時は、「您叫什么名字?」(ニン・ジャオ・シェンマ・ミンヅ?)と尋ねます。ここでも二人称を「你」ではなく「您」と丁寧に聞いています。
更に「您贵姓?」(ニン・グイ・シン?)という表現方法もあるのですが、この場合は二人称だけではなく、お名前についても「贵」を用いて更に丁寧に尋ねています。余り多い例ではありませんが、更に丁寧に表現する例と言えます。かなり目上の人や、ビジネス上で用いられます。
3. 名前の特定ではなく相手の存在を質問する例
相手を知る時に、直接名前をお聞きするのではなく、「どちら様でしたか?」と聞く用法があります。その場合でも一般的には「您是谁?」(ニー・シー・シェイ?)と直接的に尋ねますが、敬語的に尋ねる場合は「您是哪位?」(ニン・シー・ナーウェイ?)と尋ねます。「您是谁?」では、「あなた誰?」と、とてもそっけない問いかけになってしまいます。「哪」が「どちら?」という意味で、「位」が「様」に当たります。
4. 相手の存在を尊敬して表現する例
お名前を伺った後に、その方をリスペクトする意味で、リアクションする場合の用法として「久仰大名」(ジューヤン・ダーミン)と言います。「ご高名はかねがね伺っております」という意味で用います。
直訳すると「大きなお名前として久しく仰せつかっています」という感じでしょうか。どこぞの大名様という意味ではありません。ちょっと格式ばった言い方なので、一般的な友人関係などでは用いません。
5. 相手先に伺う時に謙譲的に表現する例
相手の家や会社に伺う時には、ただ行くと表現するのではなく、お邪魔する訳ですから、申しわけない気持ちを込めるものです。所謂謙譲語としての表現になります。「行く」は中国語では「去」(チュイ)と表現しますが、謙譲的に表現する場合は「拜访」(バイファン)を用います。
6. 来て頂いた事を丁寧に表現する例
伺う事の反対で、相手が来て頂いた場合は、丁寧に尊敬する表現を用います。一般的にはお店に脚を運んだ場合などに、店員さんがお客様に対して常套句として用いられていますので、耳にする事が多い慣用句と言えます。
「欢迎光临」(ファンイン・グァンリン)と言います。ご光臨頂いた事を歓迎する、という表現です。
7. お先に失礼する時の丁寧な表現例
ある状態で複数の人たちがいる場所から、お先に失礼する場合、他の人たちに対して一般的には「先走了」(シェン・ゾウラ)と言いますが、丁寧な表現としては「告辞了」(ガオツーラ)と言います。かなり硬い表現になるので、フランクな集まりなどでは余り用いません。
8. 敬語的な表現のオールラウンドプレイヤー
最も頻繁に用いられる丁寧な表現としては、「请」(チン)があります。英語の「Please」です。これは「お願い致します」という意味ですから、多くの文章で接頭語として用いる事で、その時に表現する内容を須らく丁寧に表現する事ができます。とても簡単で便利な敬語的表現ですから、オールラウンドプレイヤーとして覚えておかれべき基本的な用法です。
様々な活用方法がありますが、ここでは極めて簡単でよく用いられる例として「请问」(チンウェン)をご紹介しておきます。「お尋ねします」という意味ですので、何かを質問したい場合によく用いられます。
まとめ
いかがでしたか?
日本語の敬語表現というのはとても多彩で繊細です。それに反して、中国語の敬語的表現はシンプルと言えます。一般的には、日本語的な敬語体系は無いと言われており、相手に対して失礼な想いをさせないという意味で、二人称を丁寧に表現するだけで、基本的に敬語として成立してしまうと言っても過言ではありません。余り丁寧表現にこだわりが無く、相手を知ってしまえば、よりフレンドリーに付き合おうという姿勢が言葉にも表れています。
また、名前に関しても、日本ではどんな肩書、年齢、性別の方にも丁寧に呼称できる「さん」という単語がありますが、中国語には同様の単語が存在しません。しかも親しい間柄では氏名をそのまま呼ぶのが普通です。肩書とか、日本語の「さん」的な丁寧呼称を用いないのです。ですから中国語は基本的にフレンドリーな言語だと言えます。
初対面の方には、今回ご紹介しました敬語的表現を用いて頂き、その後はよりフレンドリーにお付き合いしてみて下さい!
中国語の敬語!場面に合わせて使い分ける8つの文法ルール!
1. 中国語の敬語表現の基本・二人称を丁寧に表現する「您」
2. 二人称を「您」と「贵」でより丁寧に表現する例
3. 名前の特定ではなく相手の存在を質問する例
4. 相手の存在を尊敬して表現する例
5. 相手先に伺う時に謙譲的に表現する例
6. 来て頂いた事を丁寧に表現する例
7. お先に失礼する時の丁寧な表現例
8. 敬語的な表現のオールラウンドプレイヤー