中国のお笑いについてあまりよく知らない日本の方が多いのではないでしょうか。メディアで報道される中国の情報の多くは時事や政治、環境問題についてであり、日中の国民間での好感度もあまり高くないことが知られています。
しかし中国に11年以上在住している筆者自身の体験から言えば中国人にも十分ユーモアのセンスがあり、一般的な民間人の多くは親切で、思考が柔軟、勤勉です。
実は中国のテレビは日本の数倍のチャンネル数があり、バラエティ番組も多く放送されています。映画界においても毎年多数のコメディをメインとした映画が放映され、日本のお笑いとは全く同じではないものの、お笑いの文化は中国国民に浸透しています。
そこで今回は、中国の笑いの文化やお笑い界の人気者、人気お笑い番組、コメディ映画、日中間での違いについてご紹介します。
中国のお笑い芸人って?在住者に聞く6つのおもしろ事情!
1. 中国にもお笑い文化ってあるの?
筆者は中国に住むまでは中国人はあまり笑わない印象を抱いていましたが、もちろん中国にもお笑い文化はあります。日本の漫才に似た伝統芸能、相声(シャンシェン)は中国で長年親しまれているお笑い文化です。
しかし、他の多くの国で見られるような現役の国家のリーダーや政治を風刺するようなお笑いは中国にはありません。中国という国そのもののあり方を公の場で風刺したり皮肉るお笑いもありません。お笑いの中でも「言っていいこと」と「言ってはいけないこと」が存在するのが中国の特徴です。
民間にもお笑いの文化は深く浸透しており、筆者の中国人の友人もユーモアのある人がたくさんいます。ただ中国では体を張った笑いや、自虐ネタ、他の人のゴシップをネタにするような行為は日本よりかなり少ない印象を受けます。
2. 中国のお笑い界有名人
中国では日本のような特定の持ちネタや芸を披露する芸人はあまり見かけませんが、人気があるのは話の上手なバラエティ番組司会者や映画俳優です。
バラエティ番組司会者の中でも何炅(ホージョン)、汪涵(ワンハン)、孟非(モンフェイ)、谢娜(シエナ)などは幅広い年齢層で人気のある司会者です。彼らは体を張って笑いを取るということはせず、ゲスト達との機知に富んだ会話で場を盛り上げます。
映画界においては日本でもよく知られるジャッキーチェンが挙げられます。カンフーを得意とする俳優ですが、出演映画の多くの場面でのコミカルな演技も人気です。
また王宝强(ワンバオチャン)という男性俳優も同じくカンフーの実力者でありながら多くのコメディ映画に出演し、親しみやすい外見も相まって人気を博しています。
ここ数年沈腾(シェンタン)という俳優も人気が出てきました。开心麻花(カイシンマーファー)という劇団に所属し、コメディ映画を主に演じています。2015年に放映された「夏洛特烦恼(シャーロータファンナオ)」で一気に知名度が上がり、その後のコメディ映画も概ね高い人気を得ています。
3. 中国の人気お笑い番組
先程ご紹介した人気司会者たちが受け持つバラエティ番組をご紹介します。
・天天向上(ティエンティエンシャンシャン)
汪涵を始め複数の司会者で進行するバラエティ番組。一時期は矢野浩二さんという日本人も司会者として出演していました。毎回異なるゲストを迎え、中国文化をより深く理解することをメインテーマとし、笑いを交えながら楽しく紹介します。
・快乐大本营(クァイルダベンイン)
何炅、谢娜を始め複数の司会者達が進行するお笑いバラエティ。毎回異なる人気芸能人、俳優などをゲストに迎えます。2017年には放送開始20周年を迎え、同年の第811回放送分は視聴者数が最も多い番組としてギネスにも登録されました。
・非诚勿扰(フェイチェンウーラオ)
孟非が司会を務めるお見合い番組。恋愛や結婚の対象を探したい一般人がゲストとなり笑いを交えながらパートナーを探す番組。
・奔跑吧兄弟(ベンパオバションディ)
俳優の邓超(ドンチャオ)やAngelaBaby等豪華人気俳優、芸能人複数が出演するバラエティ番組。会話だけでなく出演者が走り回ったりする動きの大きい番組内容。毎回異なる場所で収録。
なお、中国語を勉強する上でおすすめのドラマを以下にまとめていますので、こちらも合わせて読んでみてください。
4. 中国のおすすめ笑える映画
中国では毎年沢山の国内映画が発表されており、中でも筆者が見て面白かったのが、以下の二つです。
・泰囧(タイジョン:2012年)
王宝强(ワンバオチャン)、徐峥(シュージェン)出演、タイを舞台に繰り広げられるドタバタ劇
・唐人街探索2(タンレンジエタンソー2:2018年)
同じく王宝强主演、日本の妻夫木聡も出演。主題歌はテイラースイフト。ニューヨークで撮影された探偵映画
バラエティ番組では笑いが占める割合が大きいですが、映画の場合は笑いだけではなく、涙あり、感動ありといったストーリー展開が加わりより見応えがあります。中国では国内放映の映画にも中国語の字幕がついていることが多く、より理解しやすくなっています。
なお、中国語を勉強する上でおすすめの映画は以下で特集されていますので、こちらもぜひ読んでみてください。
5. 日常の会話内でのお笑い
中国では日常の会話でも頭の回転の速さや知識量が必要とされる笑いが好まれる傾向にあります。難度が高いですが、会話だけで笑いがとれる人に対する評価は高いです。
国によっては文化的に笑いのツボが違う場合があり、現地の国民は笑っているけども、いまいちその笑いに共感できないこともあります。その点では中国人の笑いの感覚は日本人にも理解できる範囲内だと思います。
また、中国では場の空気が読めなかったり言葉の使用が不適切な人に対する評価は低いです。他者への配慮が欠けるような失言にも注意が必要で、筆者は日本以上に中国人との会話に気を使います。
6. 日本と中国のお笑い文化の違い
中国では日本の芸人と違い、熱湯に入ったり、痛い思いをするような体を張った芸は見られません。中国のお笑いの多くは出演者とゲストのウィットに富んだ会話や、ゲームや番組の進行状況の変化を通して笑いを体験するものが主流です。
お笑いを提供する人も経験を積んだ有名司会者や実力が認められたカンフー俳優、人気俳優などなどその分野において実力、人気共にトップクラスの人たちです。彼らはシリアスにも、コメディにも両方柔軟に対応できる芸の幅広さがあります。
また、日本のように「ぽっと出」の芸人や一発芸を売りものにした新人が成功するということはまずありません。またお笑いの内容も日本のような政治や政治家、国を風刺したりするものは決して放送されず、中国文化の紹介や、政治問題や外交問題などに抵触しない内容にとどまります。
まとめ
いかがでしたか?
日本人にとって中国語は聞き取りにくいかもしれませんが、中国のお笑いは確かな実力に裏付けられた司会者、有名人による楽しいものが沢山あります。現在中国は経済的にも余裕があるため、番組のセットやロケも予算を使った立派なものが多いです。
会話主体のものは理解するのが難しいですが、ご紹介した「奔跑吧兄弟」や「快乐大本营」は動きが大きく、言葉が聞き取れなくてもおおよその内容がわかるのでおすすめです。
さらに中国では映画鑑賞費用が日本よりも安いので、中国にいらした時は是非中国コメディ映画も鑑賞してみてくださいね。
中国のお笑い芸人って?在住者に聞く6つのおもしろ事情!
1. 中国にもお笑い文化ってあるの?
2. 中国のお笑い界有名人
3. 中国の人気お笑い番組
4. 中国のおすすめ笑える映画
5. 日常の会話内でのお笑い
6. 日本と中国のお笑い文化の違い